研究概要 |
1.トリメチル-β-シクロデキストリン(TMe-β-CDx)によるビナフチル類の軸不斉認識機構:1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジイルホスファート(BNP)をゲスト分子とするTMe-β-CDxによる軸不斉認識機構を検討した結果、好ましいエナンチオマーである(S)-体の錯体は、親水部である環状リン酸エステルをCDxの疎水的空洞に挿入した構造を取り、一方好ましくないゲストである(R)-体の場合には親水部を空洞外に位置する構造を取ることがNMRや化学計算ならびに熱力学的パラメータから明らかになった。 2.アミノ化シクロデキストリンによる不斉認識:ホストーゲスト化学における不斉認識は、一方のゲストエナンチオマーが三点でホスト分子と相互作用するときに実現される。この点相互作用として静電相互作用を用いるという新しい試みを実施した。その結果、β-CDxの全ての第一級水酸基をアミノ基に変換したポリアミノ-β-CDxはN-アセチルアミノ酸の不斉を認識し、β-CDxの1つの水酸基をアミノ基に変換したモノアミノ-β-CDxは、マンデル酸やその類縁化合物の中心キラリティーを認識することを始めて見いだした。 3.アルカロイドの立体異性体認識:α-CDxがシンコニンーシンコニジン、キニン-キニジンといったアルカロイドの立体異性体を見分ける機構について、NMRにより検討した。その結果、アルカロイドのキノリンの3位のあたりがα-CDxにより包接され、その結合定数が立体異性体間で大きく異なることが明かとなった。
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