研究概要 |
9-(2-置換1,1-ジメチルエチル)-9,10-ジヒドロ-9,10-エチノアントラセンの絶対配座を決定し、置換基としてハロゲン誘導体の合成を行なった。絶対配座の決定は、置換基がカルボキシル基である化合物のカンファースルタムアミドを単結晶化し、そのX線構造解析によって行なった。その結果、HPLCにおいて容易に溶出される化合物がMscの絶対配座をもっていることが明らかになった。さらに置換基がビニル、ホルミル、メトキシカルボニル、ブロモのMsc体が、それぞれ-5.0、+33.3、-3.3、-0.3の比旋光度を示すことも明らかとなり、この系列における旋光性と絶対配座との関係が明らかとなった。 大量分割を研究した結果、置換基がアルデヒドの場合、光学活性カラムを用いて分離が可能であることが分かり、100mgの単位で、光学活性アルデヒドが得られるようになった。このアルデヒドを酸化してカルボン酸とし、それを2-チオキソ1-ピリジルエステルに導き、四塩化炭素またはブロモトリクロロメタン溶液とするか、またはヨードホルム存在下トルエン中という条件で光分解を行ない、置換基がクロロ、ブロモ、ヨードの化合物を合成した。これらの化合物のPsc体のCDスペクトルは260nm付近に大きなトラフを示す点では非常によく似ていたが、220nm付近のスペクトルはハロゲンが大きくなるにつれて振幅が大きく減少した。 メソ酒石酸の立体化学的類似体2,2',3,3'-テトラクロロ-6,6',7,7'-テトラメトキシトリプチセンの合成については、トリプチセンをアントラセン誘導体から合成するところに問題があり、まだ目的を達するに至っていない。C_<2h>対称の分子、ビス(2,2',3,3'-テトラメトキシ-9-トリプチシル)の単結晶化についてもまだ成功せず,他の誘導体を経ることを含めて検討中である。
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