研究概要 |
本研究は、電極を各種の機能薄膜により被覆し、その薄膜中における電子移動反応の解析および、機能の評価を行うことを目的とした。1)温度変化に伴う相転移を示すレドックスゲルについて、その体積変化の様子を光学干渉顕微鏡(PMIM)により観察し、水晶振動子を用いた粘弾性変化に基づく観察と一致した結果を得た。また、固定化ゲルの膨潤度に異方性があることを示した。2)イオン活量の変化に伴い相転移を示すモンモリロナイトクレーキャスト膜の膨潤・収縮挙動を、FeCl_3を含む水溶液中において電気化学的に制御できることを示した。3)スルホン酸基を持つ水溶性ポリチオフェンが高濃度の多価カチオン存在下で不溶となることを利用し、酵素ペルオキシダーゼとポリマーの混合溶液をキャストして製膜し、BaCl_2水溶液中においてH_2O_2に対する応答を観測した。その結果、ペルオキシダーゼ-ポリチオフェン間で電荷移動が可能であることがわかった。この電極は、非水溶媒中におけるH_2O_2濃度の測定にも利用できることがわかった。4)ペルオキシダーゼ単分子層固定化電極に、有機溶媒に可溶な化学重合ポリピロール誘導体を被覆することにより、ペルオキシダーゼ-電極間の電子移動が可能になることがわかった。5)電解重合ポリピロールとペルオキシダーゼとの複合膜の上にリナマラーゼとグルコースオキシダーゼの複合膜を被覆することにより、シアン配糖体であるリナマリンのセンサーができることを示した。6)2'5-ジメルカブト-1,3,4-チアジアゾール(DMcT)とポリアニリン(PAn)との混合溶液から薄膜を作製すると、600Wh/kg-cathodeを越える高いエネルギー密度が得られることがわかった。これは、DMcTがPAnの活性を維持し、PAnがDMcTの分子集電体として働くためである。また、補助分子集電体としてポリピロール誘導体を添加することにより、充電時間を短縮できることが示された。
|