研究概要 |
三価リン化合物であるBu_3P存在下カルボン酸を電解し,陽極で相当するホスホニウム塩を生成させ,このものを引き続き同一系内の陰極で還元することにより,合成化学的に有用なアシルアニオンおよびアシルラジカル等価体を発生させ得ることを前年度までの研究で明らかにした.このいわゆる「連続電解法」をさらに発展させることを目的として研究し,以下の知見を得た. 1.電解条件を詳しく検討した結果,陰極に白金を用いる高電流密度での電解により,環状δ-およびε-ケト酸から対応する二環性α-ヒドロキシシクロアルカノンがより満足すべき収率で得られることを見いだした.また,本法により,鎖状ならびに二環性のδ-ケト酸からも対応するα-ヒドロキシシアルカノン類は生成することを見いだした.2.アシルラジカル等価体の利用を目的とした電解反応において,3,3-ジカルボエトキシ-5-ヘキセン酸を基質として用いた場合,予想に反して興味ある転移反応が起こり,2-オキソ-4-カルボエトキシ-5-ヘキセン酸エチルエステルが得られた.類似の基質を用いた場合にも同様の転移反応が起こることが明かとなった.本反応を環状ケトンカルボン酸に適用した場合,環拡大反応が起こり,高度に酸素官能基が導入された合成化学的に有用な中員環化合物が生成することが期待されるため,現在さらに検討を行っている.3.アシルアニオン等価体を経るカルボン酸のアルデヒドへの変換反応において得られた知見に基づき,Bu_3Pと酸クロリドより容易に形成されるトリブチルアシルホスホニウム塩を系中でCH_3SO_3H共存下ZnあるいはZn-Cuを用いて還元することにより,アルコールを副生することなく好収率で対応するアルデヒドが得られることを見いだした.本反応は酸クロリドをアルデヒドに変換するための簡便で有効な方法である.
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