研究概要 |
π-共役系高分子ポリアニリンは、可逆的な連続ポテンシャル場を形成している。我々はこのレドックス特性に着目し、酸素雰囲気下、酸化触媒として機能することを見い出し、合成金属触媒システムとして位置づけた。遷移金属を配位させ、互いに共役系で繋がった複合系合成金属触媒システムを構築し、より高い触媒活性を達成した。一方、遷移金属触媒反応において、ポリアニリンがレドックス機能配位子として作用する触媒システムを構築した。ここではポリアニリンと低原子価遷移金属化合物とのレドックスを伴った錯形成に関して検討した。 パラジウム錯体とポリアニリン誘導体であるポリ(o-アニシジン)のレドックス過程は紫外-可視スペクトルで観測し、上記触媒反応のレドックス系を確認している。一電子還元能力を有する二価バナジウムは、ポリアニリンの還元に有効であった。三塩化バナジウムと亜鉛から調製した二価バナジウムで処理すると、紫外-可視スペクトルで、ポリアニリン酸化体に基づく630nm付近の幅広い吸収が消失した。この系に酸素を吹き込むと、600nm付近に幅広い吸収が現れた。ポリアニリンの酸化体を含む錯体が生成したと推測される。 酸化状態の高い五価バナジウムVO(OEt)_3を二価バナジウムで還元したポリアニリンの溶液に加えることでも、同様な酸化過程が観測された。形式的に酸化状態の異なる二種類のバナジウム化合物を用いることで、ポリアニリンがレドックス相互変換できた。 他の還元剤として、二価サマリウムを用いても、同様なポリアニリンの酸化体の還元が観測された。また、酸素による再酸化過程も見られた。さらに、Fc(II),Cu(I),Mn(II)でも、ポリアニリンの還元が誘起できた。 以上の如く、ポリアニリン類は遷移金属化合物とレドックス系を形成できることが明らかにされた。
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