研究概要 |
ニトロメタン中でビス(2,6-ジメトキシフェニル)ジセレニド(Φ_2Se_2と略記)を陽極酸化して高分子化合物を合成する目的で、Φ_2Se_2の第一酸化電位における電解酸化をホウフッ化水素酸共存下で行うと、1.5F/molの通電量でセレンに加えてほとんどの溶媒に不溶の黄褐色沈澱が生成した。生成物分析の結果、この沈澱は1,5-bis(2',6'-dimethoxyphenylseleno)-2,4-dimethoxybenzene(1)と同定された。また、この化合物は電解液中にも存在している事が電解液のGC-MS測定より明らかになり、電解液を濃縮乾固後、メタノール洗浄する事で単離する事が出来た。したがって、最初の沈澱物はもっと高分子量の化合物であった可能性が考えられる。加えて、Φ_2Se_2の電解生成物は酸の有無のみならず、試料濃度によっても変化する事がわかった。以下にその特徴を列記する。 1.前述と同様、46mM Φ_2Se_2の試料溶液中に酸を添加しない場合、化合物(1)は生成せず、bis(2,6-dimethoxyphenyl)selenide(Φ_2Se)のみが生じた。 2.化合物(1)の生成に必要と考えられるm-dimethoxybenzeneを添加して電解を行うと、まだ完全に同定されてはいないが、1-(2',6'-dimethoxyphenylseleno)-2,4-dimethoxybenzeneと考えられる化合物を検出した。 3.試料濃度を約10分の1(5 mM)に薄くすると、酸の存在、不在に関わらず、化合物(1)の生成は見られず、Φ_2Seが生成した. このように、実験条件を変える事で生成物の分布が変わり、さらに、ホウフッ化水素酸存在下で試料の分解も見られたので、現在、より高分子量の化合物の生成を可能にする実験条件の最適化を目指している。また、化合物(1)の生成反応機構についてもほぼ解析を終わっている。
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