研究概要 |
電極表面での新しい反応場の設計として直流高電圧パルスを印加して電極近傍に高温プラズマを発生させ、溶液内での高温熱反応、溶液イオン種の分析等を検討した。NH4NO3溶液で、Pdをカソードにした場合の発光スペクトルでは、6560Aと4860A近傍にブロードなピークが観測される。6563Aでのピークは水素原子の主量子数n=3からn=2への遷移によるものである。発光はPd近傍で観測された。この分極状態ではPd表面では水素発生が起こっている。発光がPd電極表面で発生するガスと関係があるかを確かめるために、Pdをアノードに分極して発光を測定した。NH4NO3溶液中で、Pdをアノードにした場合の発光スペクトルから6563Aに水素原子の主量子数n=3からn=2への遷移による発光が観測される。アノード分極状態ではPd表面では酸素ガスの発生が起こっている。しかしながら、Pd電極表面でのガス発生とは無関係に水素原子からの発光が認められる。そこで酸素からの発光を観測するため、6000-8000Aの波長領域での発光スペクトルを測定した(印加電圧2000V、溶液:NH4NO3)。7771Aに酸素原子(3pから3sへの遷移)による発光ピークが観測される。LiNO3溶液での発光スペクトルにおいて、6708A、6104A、4603AにLi原子の発光ピークが明確に観測される。このLiの発光と同時に6563Aには水素の発光も重なっている。Pdの分極は強度には影響を与えるもののLiの発光は観測できる。Liは水溶液中ではLi+イオンとして存在しているにもかかわらず中性原子Liとしての発光が起こっている。本研究では発光がH,O,Liの原子に対応していることから発光は気相状態でのアークによると推測される。気相の存在はPd電極表面で発生した水素あるいは酸素ガスの中か、あるいは高電流による溶液内部での小さな泡が考えられる。
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