研究概要 |
化合物中に異なった種類の金属を組み込んだ複合金属錯体は,単一の金属では存在しない性質や高い機能性を発現することが期待される。本研究では,架橋配位子としてN,S配位する2-pyridinethiolate(pyt)およびそのメチル誘導体4-methyl-2-pyridinethiolate(mpyt)を用い,白金(II)あるいはパラジウム(II)とバナジウム(IV)を組み込んだ異核複核錯体[M^<II>L_4V^<IV>O](M=Pt or Pt,L=pyt or mpyt)を合成し,それらの酸化還元挙動をin-situ分光電気化学を含む電気化学測定により検討した。さらに,-電子還元生成物へのヨウ化アルキル(MeI,EtI)の付加に対する反応性を電気化学測定により検討した。 いずれの錯体も非プロトン性溶媒中で可逆な1電子還元過程を示す。酸化還元電位(E^<O,>)に及ぼす配位子の影響を見ると,[M(mpyt)_4VO]のE^<O,>は相当する[M(pyt)_4VO]のE^<0,>よりも約110mV負電位にあり,ピリジン環の4位のメチル基の電子供与性の影響を受けている。また,中心金属の白金とパラジウムを比較すると,[PdL_4VO]のE^<O,>は相当する[PtL_4VO]に比べて約140mVだけ還元され易くなっていて,PdとPtのイオン化電位の差の影響を受けている。In-situ可視吸収スペクトル測定の結果より,[PtL_4VO]錯体の1電子還元体は安定に存在するが,[PdL_4VO]錯体のそれは-15℃でも徐々に分解することが分かった。還元反応中心を明らかにするために,還元体[PtL_4VO]^-とヨウ化アルキルとの反応について検討した。その結果,1電子還元生成物[Pt(pyt)_4VO]^-がMeIと反応するEC機構で電極反応は進行している。[Pt(pyt)_4VO]^-,[Pt(mpyt)_4VO]^-ともにMeIとの反応性はEtIよりも大きく,また[Pt(pyt)_4VO]^-[Pt(mpyt)_4VO]^-を比べると[Pt(mpyt)_4VO]^-の方が求電子剤との反応性が大きいことがわかる。以上の1電子還元体[PtL_4VO]^-へのRIの反応性より、[PtL_4VO]の還元中心はPtであると結論づけられる。
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