研究概要 |
遺伝子の発現などDNAの塩基配列認識は生体系で重要な役割を果たしている。塩基配列特異性が特に高い例は2量体となって2本鎖DNAに作用するリプレッサー蛋白質や、回文構造を持った塩基配列を切断する制限酵素にみられる。本研究は小分子でありながら二重らせんの両鎖を認識する有機金属錯体の開発を目的とする研究の一環である。目的化合物は2回対称性をもち、かつキラリティーが一致する必要がある。さらに、金属と錯体をつくり有機物である配位子の立体化学を固定させる。最終目的化合物は塩基配列認識部分のほかに相互作用時の条件を変える(スイッチをON/OFFする)ことによりDNA鎖を切断する部分をもったものも考えた。DNAのキラリティーに対応してDNAを認識するコア部分として、C(3)およびC(3')位に置換基を導入したbipyridyl誘導体を配位子とする金属錯体を、また認識部位はN‐methylpyrroleあるいはthiazole環を、切断部位はp‐nitrobenzoyl基を採用した。 3,3'‐dimethyl‐2,2'‐bipyridylをN‐oxideとしてpyridine環を活性化して4位及び4′位に選択的にnitro基に導入し、これをdibrom化した後で脱酸素しdibromobipyridylとした。このdibrom体をEt20中、-78℃にて4当量のnButyllithiumで6h反応させてdianionとしこれをtributyltinchlorideで捕捉してbis‐stannyl化した。最後に酸化銅存在下にStille couplingを行ない目的とするリガンドの合成を完了したところである。今後はFe,Ni,Cuなどの種々の金属と錯体を合成し、DNA切断能を検討する予定である。
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