研究概要 |
我々はこれまでにW、Moなど5、6族遷移金属の錯体が置換アセチレンの重合に有効であることを明らかにしてきた。本研究では新しい金属カルボニル系および金属フェノキシド系触媒の開発について検討した。以下に本年度の研究成果の要旨を述べる。 1. M(CO)_6-Ph_2CCl_2-光触媒による置換アセチレンおよびノルボルネンの重合-M(CO)_6-Ph_2CCl_2-光触媒によりo-Me_3SiPA、t-ブチルアセチレンなど立体効果の大きい一置換アセチレンおよび1-クロロ-2-フェニルアセチレンなどの二置換アセチレンから数10万という高分子量のポリマーが生成した。シクロオレフィンであるノルボルネンも本触媒により重合し、高重合体を生成した。この場合WよりMoの方が高い活性を示した。 2. W(CO)_3Cl_2(AsPh_3)_2によるフェニルアセチレンの重合-本触媒を用いてフェニルアセチレンの重合を検討した。トルエン中、30℃での重合により約30%の収率で分子量3万のポリマーが得られた。この触媒による重合は溶媒としてトルエンを使う必要がなく、UV照射も不要であった。 3.新しい金属フェノキシド系触媒の開発および特性の解明-WCl_2(OPh)_4、WCl_2(O-2,6-Me_2Ph)_4、WCl_3(O-2,6-Me_2Ph)_3などによるフェニルアセチレンの重合を検討した。これらの錯体はWCl_6と比べて有機溶媒への溶解性が高く空気中での安定性も良好であった。共触媒としてEt_3Al、Et_2Zn、n-BuLiなどの強いアルキル化剤を用いると高収率でポリマーが得られた。生成ポリマーの分子量は最高約10万と大であった。
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