研究概要 |
Fischer型カルベン錯体を組み込んだヘテロ環化合物については、これまでにあまり合成例がなく、新しいタイプのカルベン錯体である。そこで、本研究では2種のカルベン錯体を組み込んだヘテロ環化合物を合成し、その性質、反応性について調べた。 (1)アルコキシクロムカルベン錯体およびタングステンカルベン錯体のアニオンとトロポン類の反応によって、1オキサアズレニリデン錯体を合成した。このカルベン錯体の構造はX線解析によって決定し、平面で安定な10π原子系化合物であることがわかった。この錯体の溶液は濃紫色を呈し、アズレンと類似したπ原子系を作っていることがわかった。 (2)アミノカルベン錯体のアニオンのアルキル化および5,6-ジヒドロ(IH)-ピリジン錯体の合成を行った。アミノカルベン錯体のアニオンは比較的安定で、有機合成に利用できると考えられる。そこで、アルキルリチウムを用いてアミノカルベン錯体のアニオンを発生させてα,β-不飽和カルボニル化合物と反応させたところ、一段階で5,6-ジヒドロ-2(IH)-ピリジン錯体が生成することを見出した。また、相間移動触媒を用いるアミノカルベン錯体のアルキル化反応によって、4員理-7員理の結合したアミノカルベン錯体が収率よく合成できることも見出した。
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