以下の成果を得た。 (1) MS/MS装置にアルカリ金属ターゲットの導入を可能とし、検出系等の改良の結果、正イオンをアルカリ金属中に入射し、負イオンを検出できる電荷逆転質量分析法を開発した。装置の改良を行い、ターゲットにCsとKの2種類のアルカリ金属の導入が可能となった。 (2) 従来その識別が困難であった炭化水素の異性体であるアレンイオン(CH_2CCH_2^+)とプロピンイオン(CH_3CCH^+)を電荷逆転質量分析法により明確に識別することができた。 (3) 電子励起状態のC_3H_4からの2つの水素脱離は水素原子が独立に2個脱離するのではなく水素分子として脱離していることを見い出した。 (4) CsとKの2種類のターゲットによる実験により、水素分子脱離は水素原子脱離より活性化エネルギーが高いことを見い出した。 (5) 重水素置換体であるCD_3CCHを用いることにより、水素原子の脱離は主としてメチル基から起こっていることを明らかにした。 (6) 電子励起エネルギーはC-H結合の振動モードへ緩和し、C-C結合にはほとんど緩和しないことを見い出した。
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