研究概要 |
新たに製作した電子衝撃型イオン源を光-イオンビーム合流装置に接続し,放射光を用いてXe^+,Xe^<2+>標的の4d電子イオン化領域(100eV領域)での光電離過程を測定した.Xe^+標的の光電離断面積には,(i)75eV以下の線スペクトル,(ii)75-87eVにかけての肩,(iii)100eV付近の幅の広いピーク,が観測され,これらの特徴をmulticonfiguration Dirac-Fock計算コードを用いて解析した.その結果,(i)は4d-->5p,6p,7p遷移が主であり,断面積は小さいもののに中性Xeでは観測されていない4d-->4f遷移もあることが判明した.これは,外殻の5P電子個数の減少により原子核電荷の遮蔽の程度のわずかな変化の結果,Xe^+の4f電子がcollapseし始めたことによるものと解釈された.また,(ii)は中性Xeでも観測された4d->εfの巨大共鳴と考えられた.今回の測定で最も興味深いのは,特徴(iii)である.計算結果より,このエネルギー幅の広い構造は,4d^95s^25P^44fnp(n=6,7)といった配置を終状態とする二電子励起状態に対応するものであることが結論づけられた.これは,外殻電子数の減少と,5p電子の励起による有効核電荷の増加により,4f電子が強くcollapseしたためである. Xe^<2+>標的については,まだ統計精度の悪い結果しか得られていないが,80-90eVの領域に幾本かの線スペクトルが見られた.これは,Xe^<2+>においてはnf電子はすでにcollapseしているために生ずる4d-->nf遷移に対応するものと考えられよう. 本研究に於いて,イオン標的の光電離過程を等核系列で比較することから,イオン価数変化によるその終状態の大きな変化を明らかにすることができた.
|