研究概要 |
X線天文衛生「あすか」で4個のO型星ζ-Ori, δ-Ori, λ-Ori, ζ-PupからのX線を観測した。そして、各々の星から、高階電離したマグネシウムや珪素からの輝線を発見した。これより、O型星からのX線は熱的な起源をもつことを明らかにした。この結果を根拠にX線が光学的に薄い高温プラズマからの放射であると仮定して、X線放射のモデルと輝線の強度から、酸素、ネオン、マグネシウム、珪素、硫黄、鉄の組成比を見積もることに成功した。その結果、それらの元素組成比は、硫黄を除いて、いわゆる宇宙組成の約1/3以下で、とくに、鉄に関しては約1/10以下である事がわかった。これら、重元素の相対組成比は大質量星の爆発であるII型超新星で作られる元素組成比とたいへん良く似ている。このことから、O型星はII型超新星によって汚染されたガスから作られた事が示唆される。 また、O型星の元素組成比がいわゆる宇宙組成比より重元素が少ないということは、次のような大問題を含んでいる。O型星のような早期型星はその年齢がせいぜい1千万年であるから、O型星を形成する元となったガスは、1千万年前のわれわれの銀河系内にあったガスである。O型星のような早期型星の表面のガスはほぼ星が形成された時のガスのままであるか、または、星内部の核融合反応によって生成された重元素によりさらに汚染されているはずである。X線は星風か、表面のコロナから放射されているはずであるから、X線で決めた重元素比は、星表面物質の重元素比を表わしている。すなわち、我々の結果は、1千年前の我々銀河系のガスがいわゆる宇宙組成比よりもはるかに少ない重元素しか含まなかった事を示唆している。
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