研究概要 |
宇宙において、炭素や酸素、さらに重い元素がどのように合成されてきたかを理解するためには、関係する様々な原子核反応の反応率の値が必要である。この元素生成のシナリオを決める上で、未解決の最も重要な元素合成過程の一つに、ヘリウム(He)燃焼過程の^<12>C(α,γ)^<16>0がある。0.3MeVのエネルギー領域における反応断面積が必要なのであるが、これを直接測定することは、クーロン障壁のため、現在の技術では不可能である。 そこで、この反応断面積を理論的に推定しようというのが、本研究の目的である。本研究においては、軽い原子核の構造の分析に成功しているクラスター模型の一つである直交条件模型を用いて、酸素原子核の再分析を行った。とくに、パウリ原理の効果の取り込みに注意した。その結果、エネルギー準位、電気的遷移、密度分布、散乱現象を、統一的に、かつかなりよい精度で説明することができた。これをもとに、反応率を与える天体核S因子を、およそ135keVbであると推定した。これは、現在のところ、理論的推定値として精度において最善のものであると評価されている。また、パウリ原理の効果について、方法の妥当性を確認するために、関連する研究を行った。 成果の一部は、1995年12月14日-16日、ハワイ大学において開催された、日米科学協力事業「Joint Japan-US Seminar on Clustering Phenomena in Nuclear and Mesoscopic Systems」において、口頭発表した。現在、本成果及びそれに基づいた実験の解析に関し、投稿論文を準備中である。
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