研究概要 |
1。1994年から1995年にかけて、新しい世代のガンマ線測定器システム[Gammasphere(米国Berkeley),Eurogam(フランス、Strasbourg)]を用いた実験により、超変形Hg190,192,194の励起バンドが発見された。これらの高スピン回転バンドの動力学的慣性モーメントは、通常の「回転座標系シェルモデル」では説明できない奇妙な性質を示している。我々は、「回転系でのRPA近似」に基づく微視的モデルを展開し、空間反射対称性を破る八重極型の表面変形振動モードと、回転整列した準粒子モードの競合の形態の多様性によって、これらの実験データの主要な特徴を予盾なく統一的に説明できることを示した。我々は高スピン超変形核に特有なシェル構造の下では、通常変形核とは異なる性質を持った新しい型の振動モードが現れる可能性があることを理論的に予測してきたが、超変形Hgアイソトープの励起回転バンドは、この種の八重極型振動モードの存在を直接的に支持する初めての実験データと考えられる。 2。空間反射対称性を破った、軸対称変形cavityに閉じ込めれた粒子の量子力学的固有値分布のゆらぎに現れる規則的な振動パターン=シェル構造の形成の様子を系統的に調べ、4重極変形と8重極変形が一定の割合で重なり合うとき、顕著なシェル構造が形成されることを見いだした。この量子力学的計算結果の物理的解釈を得る目的で、非可積分ハミルトン力学系に対する半古典論(経路積分の半古典近似により導かれるGutzwillerトレース公式とその拡張)およびスケール系に対するフーリエ変換の技巧を用いて、周期軌道の性質の表面変形への依存性を解析した。その結果、8重極変形の成長と(対称軸に垂直な平面上の)2次元周期軌道の安定性と分岐の性質の間に関連があることが分かった。この結果は、8重極変形の安定性と非対称核分裂やクラスター形成の間に何らかの関係があることを示唆している。
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