半導体ヘテロ界面構造を用いた量子ドットでは、界面平行方向の閉じ込めポテンシャルは調和型ポテンシャルで良く近似される。界面垂直方向(z-軸)にも調和型ポテンシャルを仮定した異方的調和型閉じ込めポテンシャルを持つ量子ドットの多電子基底状態と、基底状態と量子数の異なる多電子励起状態を求めた。それより、トンネル電流のバイアス閾値に対応する化学ポテンシャル、量子ドットの静電エネルギーを記述する静電容量を求めた。 N電子固有状態はz軸の回りの全軌道角運動量L〓、スピン角運動量S〓で特徴づけられる。基底状態のエネルギーE(N)の計算には、非制限ハートレーフォック法を用いた。スレーター行列の基底は、1電子ハミルトニアンの異方的調和振動子の固有関数を用いた。 基底状態のエネルギーE(N)、化学ポテンシャルμ(N)=E(N)-E(N-1)、微分容量C(N)=e^2/[μ(N+1)-μ(N)]の計算を行ない、量子化効果と電子間相互作用効果の競合を明らかにした。基底状態は、横方向の閉じ込めポテンシャルが弱い場合は強磁性状態となり、強い場合はフントの規則に従った常磁性状態になる。 量子化効果による1電子準位の殻構造と電子間相互作用を反映して、C(N)は電子数Nの関数として振動しながら増加する。量子ドットが界面垂直方向にも広がりを有する効果は、横方向の閉じ込めポテンシャルが強い場合にC(N)に対して無視できず、特定の電子数で顕著に現れる事が判明した。
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