研究概要 |
本格的な噴火の開始以前に噴出される火山灰を詳しく調べることによって,マグマの性質や環境を把握でき,近い将来の噴火の様式やそれに伴う災害についての予測が可能となりうる。 雲仙普賢岳と似たような火山活動史を持つ九重火山が,約250年ぶりに,1995年10月中旬に噴火した。当初は噴出物にはマグマ物質が含まれず典型的な水蒸気爆発であった。この噴火初期には土砂噴出を行い,その後は,火口拡大を行い火山灰を吹き上げた。12月下旬の噴出物にはマグマ物質が数パーセント以下程度含まれるようになった。 雲仙普賢岳では1990年11月中旬に水蒸気爆発がおこり,1991年2月中旬の再噴火ではマグマ物質が火山灰中に含まれるようになった。このマグマ物質は,当初,数パーセント程度だったものが溶岩ドームが出現する同年5月前には約30%程度までに上がっていた。九重火山では10月の噴火が普賢岳の最初の噴火に比べて大きい反面,再噴火以降,噴火の規模が大きくなり,間隔が狭まるなどの傾向は見えていない。また,普賢岳では噴火に先立って構造性の地震が多発したり,連続的な火山性微動が起こっていたが,九重火山では単発的にしか起きていない。この点普賢岳と九重火山とは異なった様相を示している。 今回の九重火山の噴火は地下のマグマで加熱された気液混合物が何らかの理由で突然爆発したものである。その後,放出されたマグマ物質の化学分析による解析では,地下数km付近に高温のマグマが存在していることが示唆されるが,マグマの動きを読み取る技術が今後要請される。
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