研究概要 |
まず、懸濁半導体光触媒TiO_2を用いて、メタノール溶媒中に溶解させたアニリン類の反応を調べた。その結果、4-エトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロキナルジンが高収率で生成され、その立体選択性の非常に高いことがわかった。この反応機構は、メタノールが正孔により酸化されてできるアルデヒド類とアニリン類との反応によりイミン類ができ、その2分子が反応することにより、4-アニリノ-1,2,3,4-テトラヒドロキナルジン類が生成し、さらに4-アニリノ基の脱離が起こり、生じたカルボニウムイオンとエタノールが反応して4-エトキシ体になるものと推測した。なお、今年度購入したガスクロマトグラフは、この実験における生成物の定量に有効に使用された。なお、CdS粉末を用いた場合には上記の反応は進行しなかった。以上の結果は、1995年光化学討論会(平成7年10月、福岡)で講演した。 CdS電極に関しては、金属のメッキ浴における錯化剤等に用いられるエタノールアミンやヒドラジンの光電極反応を調べたところ、いずれの場合にも、問題となるCdSの光腐食はほぼ完全に抑制され、それらの分解反応が高効率で進行することがわかった。さらに興味深いことに、それらはルイス塩基としてのCdSのルイス酸点であるCdサイトに配位結合し、CdSの表面電子構造に決定的な影響を与えていることがわかり、錯体化学の理論を半導体表面における吸着現象に適用できることが明らかになりつつある。これについては、'95環太平洋国際化学会議(1995年12月、Honolulu)で講演し、現在、投稿準備中である。 その他、可視光に応答し、しかもCdSに比して公害元素になりにくいPbO光電極についても検討し、まず光電気化学活性なPbO膜の作成条件の最適化を試みた。
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