研究概要 |
当該年度における主要な研究テーマは、(1)プロトン移動が起こらないバクテリオロドプシン変異体に対してその原因を解明すること、(2)ロドプシンにおける水の構造変化を明らかにすること、(3)測定可能な領域を拡張することであった、これらに関して以下のような成果が得られた。 (1)プロトン供与体であるプロトン化シッフ塩基と受容体である解離したアスパラギン酸85が存在するにも関わらずプロトン移動が起こらない変異体D212NのL中間体の構造解析により、シッフ塩基からAsp85への分子内プロトン移動は、水分子を介して起こり、その過程においてAsp212が重要な役割を演じていることが明らかになった(Kandori et al., J. Am. Chem. Soc. 1995,117,2118)。 (2)一方、バクテリオロドプシンと比較して研究の遅れているロドプシンの構造解析を赤外の全波数領域で行い、発色団近傍に水分子が存在すること、異性化によって起こる蛋白質の構造変化を明らかにした(Kandori et al., Biochemistry 1995,34,14220)。 (3)さらには、研究室に既存の赤外分光装置を最適化し、全波数領域の測定を可能にした。このことは今後の研究の発展を約束するものであり、現実にロドプシンの全波数領域の測定がはじめて可能になり、(2)の研究を行うことができた。 それ以外にも、バクテリオロドプシンやその変異体、ロドプシン、ハロロドプシン等の研究を推進し、研究発表論文の欄に掲載した種々の成果を挙げることができた。
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