研究概要 |
励起状態における分子間および分子内相互作用によって生成する励起錯体の化学的特性を明らかにし、新しい高選択的光化学反応を開発することを目的として研究を行い、以下の知見を得た。 1.9,10-ジシアノアントラセン(DCA)を光増感剤とする1,1-ジフェニルプロペンをはじめとする芳香族アルケンへのメタノールの分子間および分子内光極性付加反応の機構を詳細に検討し、ベンゼンなどの芳香族系溶媒または塩化メチレンなどのハロゲン系溶媒中で効率よく進行することを明らかにした。また、量子収量の測定や蛍光消光実験などからこれらの光反応は電子移動によって生成するラジカルイオン種よりもむしろエキシプレックスを経由して進行することを明らかにした。 2.分子内にナフタレン環とアルケンまたはフラン環をもつ化合物を合成し、その光化学的挙動を検討した。1-シアノナフタレンと置換アルケンとをメチレン鎖で連結した化合物では、エキシプレックスを経由して芳香環への2種の(2+2)分子内光環化付加体が効率よく生成することを明らかにした。この系にEu(III)塩を添加すると、一方の付加体のみが位置選択的に生成することを見いだした。また、1-シアノナフタレンとフランとを連結した化合物では、分子内エキシプレックスを経由して単一の(4+4)分子内光環化付加体が生成することを明らかにした。
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