研究概要 |
時間分解ラマン分光法およびレーザーフラッシュフォトリシス法を用いて、フラビンの光還元反応およびスピロピランの励起分子の構造について以下のことを明らかにした。 (1)フラビンの光還元反応の機構:フラビンモノヌクレオチド(FMN)は最低励起三重項状態^3FMN^*を経由して、pH8.3以上ではアニオンラジカルFMN-・を、pH8.3以下ではセミキノンラジカルFMNH^・を生成する。このとき、^3FMN^*(吸収極大波長λ_<max>=377,494,660,710nm)は酸性溶液中でもアルカリ溶液中でも、基質から電子を奪って先ずFMN^<-・>(λ_<max>=367,485nm)を生成するのであり、水素原子を引き抜いてFMNH^・(λ_<max>=340,481,571nm)を生成するのではないことを時間分解ラマン分光法により明らかにした。なお、酸性溶液中では、生成したFMN^<-・>が更にH^+と結合してFMNH^・になる。 (2)6-ニトロー1′,3′,3′-トリメチルスピロ[2H-1-ベンゾピラン-2,2′-インドリン](6-nitroBIPS)の励起分子種:フォトクロミズムを示す6-nitroBIPSは、シクロヘキサン溶液中紫外光照射により、ナノ秒以後の時間領域で、3種類の過渡分子種を生成することを、時間分解ラマン分光法により明らかにした。最も寿命の短い過渡分子種(λ_<max>=435nm)は、最低励起三重項状態であり、二番目の寿命の過渡分子種(λ_<max>=580nm)は、C_<spiro>-O結合が切れたフォトメロシアニンである。最も寿命も長い過渡分子種(λ_<max>=530nm)はフォトメロシアニンの二量体であることを明らかにした。なお、C_<spiro>-O結合の開裂は最低励起一重項から起こる。
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