本研究は、界面層をパルスレーザーで励起した場合の界面とバルクにおける屈折率変化を、高感度に時間分解して検出する光スイッチング分光法を確立し、界面層に固有の光物理現象ないし化学反応を解明しようとするものである。今年度は、サブマイクロ秒の時間分解能を持つ光スイッチング分光システムを組み立てると共に、これを固体/液晶界面層に適用し、界面に固有の屈折率変化のダイナミクスを見出した。さらに、吸収の効果を取り入れた全反射光学の理論的取り扱いを行い、実験結果をシミュレーションした。 1)光スイッチング用のセルを作製し、精密回転ステージに取り付け、コンピュータ制御により角度分解しながらプローブ光(He-Neレーザー)の反射ないし透過光を時間分解して検出する光スイッチングシステムを作製した。検出系に光ファイバー、光電子増倍管、オシロスコープを用いており、時間分解能は数十ナノ秒程度である。さらに、プローブ光の波長に吸収がある場合について、一般化したFresnelの係数を考慮する事により、複素屈折率変化の入射角依存性をシミュレーションし、レーザー光の照射により反射率や透過率がどの様に変わるか計算した。臨界角の近傍1度程度の領域での測定により、10^<-4>程度の屈折率変化をその符号も含めて容易に検出できることを計算で示し、実験的にもこれを確認した。 2)サブマイクロ秒の光スイッチング分光システムをサファイア/液晶界面層に適用し、各相における界面とバルクの屈折率変化を時間分解して解析した。この結果、液晶の光励起に伴う屈折率変化の符号(方向)はネマチック相と等方相で全く逆であり、また界面の屈折率変化の緩和はバルクに比べて極めて速いことがわかった。拡散方程式の解析から、この結果が界面の熱伝導により解釈出来ることを示した。
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