研究概要 |
溶媒に,2-プロパールを用い,キサントン(XO)の反応中間体をESR,過渡吸収スペクトルで調べたところ,溶媒およびキサンテン(XH)との反応では水素引き抜きによってXOケチルラジカルとプロパノールラジカルまたはザンセニルラジカルの三重項中性ラジカル対が生じ,N,N-ジエチルアニリン(DEA)との反応では電子移動によってXO・^-とDEA・^+の三重項イオンラジカル対が生じることが確認された。 これらのラジカル対の動的挙動を0-1.5Tの磁場下で測定したところ,中性ラジカル対においては磁場による変化は僅かであり誤差範囲であったが,イオンラジカル対では明瞭な磁場効果が観測された。イオンラジカル対から散逸したラジカルの収量は磁場強度の増加に伴い増加し,超微細相互作用よりも大きな磁場である1Tでも飽和しなかった。溶媒をアセトニトリルに変えても磁場効果は観測されたが非常に小さかった。また,アセトニトリル-水混合溶液中での磁場効果はアセトニトリル中よりは大きいものの,2-プロパノール中と比べると小さかった。そこで,最も磁場効果の大きかったXO-DEAの2-プロパノール溶液を用い,DEA・^+の吸収のある470nmでの吸光度の経時変化に対する強磁場効果を0-10Tの磁場下で測定した。その結果,散逸ラジカル収量は0-1.5Tまでは磁場強度の増加に伴い増加するが,3-10Tの範囲では減少に転じていることがわかる。このような磁場効果の反転の機構としては,緩和機構が考えられる。 次に、2,5-ジメチルp-ベンゾキノン(Q)とDEAとの間の電子移動によって生じるキノンアニオンラジカル(Q・^-)とDEA・^+の散逸イオンラジカル収量に磁場効果が観測された。磁場効果の大きさに対する溶媒依存性については,2-プロパール溶液中が一番大きく,散逸ラジカル収量は0-0.1Tでは磁場強度の増加に伴い増加するが,1.5-10Tでは減少していることを見出した。この磁場効果の反転の大きさはXO系より大きい。Q・^-のg値(2.0045)は,XO・^-のg値(2.0037)と比べて大きいことから,Q-DEA系ではΔg機構の寄与が大きいと考えられる。
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