研究概要 |
本年度の研究業績の概要は以下の様である. 1)単分子膜貼り合わせ法により作製した人工平面脂質二分子膜中でグルタミン酸受容イオンチャンネル蛋白のアゴニスト間及びレセプター間の化学選択性を記述することを目的として,アゴニスト活性の異なる二つのタイプのグルタミン酸受容イオンチャンネル蛋白(NMDA及びnon-NMDAタイプ)を包埋した脂質二分子膜複合場において,個々のタイプのレセプターのイオンチャンネル活性を選択的に識別して発現できることを見出した. 2)人胎盤から抽出,精製したインスリンレセプターを用いる,インスリンの超分子形成に伴う情報伝達を原理とする新規化学センシング法を構築することを目的として,そのために必要なインスリンレセプターの単離,精製及びその同定を行い,組織重量当たり収率約0.01%でインスリンレセプターを得ることに成功した. 3)牛脳から単離,精製したカルモジュリン(CaM)蛋白と合成ペプチドM13(ミオシン軽鎖カイネースのCaM結合部位のモデルペプチド)を用いて,超分子(Ca^<2+>/CaM/M13三元錯体)の形成に基づく表面プラズモン共鳴(SPR)の変化を測定することに成功した. 4)極性基の異なるリン脂質,フォスファチジルセイン(PS)及びフォスファチジルコリン(PC)単独のリポソーム(SUV)が,メルカプトプロピオン酸で疎水化した金電極上へ融合する過程をspr法によりreal timeで観測することに初めて成功した.また,この疑似凝集生体膜上での蜂毒メリチン反応を同じくSPR法で追跡できることを見い出した.
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