研究概要 |
本研究は,微小管機能を制御する超分子形成について,チューブリン・阻害剤複合体の構造を解析して微小管機能を解明すること,作用機作に基づいた分子設計により新規生理活性物質の創製を図ることを目的としている. 本年度は,リゾキシン/メイタンシン部位リガンドであるウスチロキシンAの接触還元により,最単純構造でしかも強い活性を持つウスチロキシンDに容易に変換できること,Dのエチルエステルも強い活性を保持していることを見出した.更に,Dのエチルエステルからの化学変換により,NHCH_3基およびフェノール性OH基のメチル化で活性を失われることを明らかにした. 新規コルヒチン部位リガンドと報告されているキュラシンAの,絶対構造の推定と活性発現に必要な構造要因の解明を目指し,3個の不斉中心を含むメチルシクロプロパンチアゾリン部分の立体異性体を合成して,施光度とNMRデーターから天然配置を推定したが,その後の報告と一致した.しかし,これらは全て活性がない.現在,全合成が進行中であるが,その過程で,メチルシクロプロパンカルボン酸のキラル合成の有用な方法を考案した. 海綿から得たアレナスタチンAは,強い微小管蛋白重合阻害活性を示した(IC_<50>;2.8μM).これのチューブリンへの結合はコルヒチンとは全く競合せず,ビンブラスチンで阻害されるがその程度は弱い.リゾキシンにより拮抗的に阻害される. 日本産イチイから単離された5個の新規タキサン化合物に,タキソ-ルと同様な,Ca^<2+>による微小管脱重合を阻害する活性が認められた.これらが,タキソ-ルの抗腫瘍作用に重要とされているオキセタン環やアシル側鎖を有しないことは興味深い.
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