研究概要 |
補酵素NAD^+の存在下IPMから2-オキソイソカプロン酸への酸化・脱炭酸を触媒する3-イソプロピルリンゴ酸(IPM)脱水素酵素(IPMDH, E. C.1.1.1.85)の超分子形成機構や機能制御について、高度好熱菌Thermus thermophilus HB-8由来の酵素により検討した。 新規阻害剤として設計した3-ビニルリンゴ酸(VM)は強力な可逆的拮抗阻害剤であった。VMは活性部位で何らかの変換を受けた後に阻害作用を示すと考え、その真の阻害剤活性構造を明らかにすべくVM存在下の酵素反応をNaBH_4またはNaB^2H_4にて停止して生成物をメチルエステルとしてGC-MSで比較分析し、重水素化2-hydroxy-3- pentenoic acidの生成を確認した。これは、VMから生じた2-oxo-3-pentenoic acidが可逆的なMichael-受容体として阻害活性を現している可能性を示唆する。 鎖場構造の基質IPMの酵素活性部位内での立体配座を推定するため、イソプロピルマレイン酸及びイソプロビルフマル酸のエポキシドを配座固定型基質類縁体として合成した。前者がKi17mM,後者が3.2mMの競争的阻害活性を示し、活性中心における基質の配座を示唆するとともに、基質カルボキシラート認識部位の酵素内での空間配置に対応すると考えられた。 自然突然変異体(R85S)や特異的変異(Y36F)で配座が変動するArg-94の機能を調べるため、静電的特性が近縁で炭素鎖長の異なるR94Kの変異体を作製した。Kmは殆ど変化がなかったが、kcatが約1/80に低下した。従って、Arg-94は基質認識より触媒活性に寄与していると考えられた。
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