本研究では、大腸菌中に含まれる転写調節因子SoxR蛋白質の活性点を構成している金属サイトの構造と機能を明らかにするため、以下に述べるような研究を行った。まず、組換え型SoxR蛋白質発現系の構築を行った。発現ベクターには、tacプロモーターを有する原核細胞発現用ベクターであるpKK223‐3を用いた。pKK223‐3に組み込むsoxR遺伝子は、大腸菌JM109株のクロモソームDNAを鋳型とするPCR法により合成した。組換え型SoxR蛋白質発現用の宿主には、大腸菌JM109株を用いた。組換え型SoxR蛋白質発現は、以下のようにして行った。発現ベクターを有する大腸菌JM109株を、30度で培養し、培養液の600nmにおける吸光度が0.4に達した時点で、イソプロピル‐β‐D‐チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加する。IPTG添加後、培養温度を20度とし、一晩培養を続ける。組換え型SoxR蛋白質の精製は、以下のようにして行った。培養終了後の菌体を集め、リン酸緩衝溶液に懸濁する。超音波処理により菌体を破壊し、遠心分離により可溶性画分を得る。これを、陽イオン交換カラムであるCM‐Sepharoseに添加し、吸着蛋白質を溶出させる。組換え型SoxR蛋白質は、赤茶色の画分として溶出してくる。このようにして得られた組換え型SoxR蛋白質は、ほぼ均一な状態であることを、SDS‐PAGEにより確認した。精製した組換え型SoxR蛋白質の吸収スペクトルを測定したところ、2核の鉄硫黄クラスターに特徴的な吸収ピークが観測された。このことから、SoxR蛋白質には、植物型フェレドキシンと類似した、2核の鉄硫黄クラスターが含まれていることが分かった。
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