研究概要 |
天然には切れ味の良い低分子化合物がまだまだ数多く存在しているものと推定できる.しかしながら,いかなる機能で分子を探索するかが重要であり,その選択によっては新しい分類に属し,新しい機構で機能する有機分子の発見につながる.本研究ではまず低分子,特に多酸素化された機能性の顕著な分子の発見を目指し研究を進めた.その結果,目的とする新規機能分子をいくつか得ることが出来た.以下にその成果を示し,超分子形成と超分子自身の構造解明を目指す次の展開について報告したい.1)沖縄産の二枚貝の有毒物質ピンナトキシンの構造-Pinna属のタイラギ貝の貝柱は大型で"タイラ貝"と呼ばれ,日本の主に九州地方及び中国の東南部で賞味されるが,しばしば原因不明の食中毒事件の発生が報告されている.沖縄産のタイラギ貝の仲間イワカワハゴロモから食中毒原因有毒物質,ピンナトキシンA,B,Dを発見,その化学構造を解明した.2)抗HIV活性を有するジテルペン類-生薬由来の多酸素化有機分子と生体分子との間で形成されている超分子の構造を明らかにする.13‐オキシインゲノール誘導体に強い活性が観察され,今後この分子についても超分子形成を明らかにする.現在までのところ,リンパ球細胞の表面に存在するCD‐4レセプターの内在化が作用機序と推定している.3)血管内皮細胞接着分子VCAM‐1の産生阻害物質-血管内皮細胞接着分子VCAM‐1はリンパ球や悪性腫瘍と血管内皮との接着を司る分子である.この分子の内皮細胞上での産生を阻止できれば炎症病巣の発生や,がんの転移を抑えることが可能である.本年度,新規物質であるハリクロンをクロイソカイメンより発見した.顕著な活性を示すので生体内実験での結果が待たれる.4)バイオフィルム形成制御物質の探索研究-沖縄産の海綿から活性物質ウンテニン類を単離した.合成も可能にしたので,屋外での実験を急ぎたい.
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