研究概要 |
昨年度は試料のマジック角回転を導入することにより、イオノホアであるラザロシッドAの液晶中のコンホメーションを決めることが出来たが、方法論としては、just-Magic-Angleでの試料回転は、液晶試料特有の直接結合定数Dと言う構造情報を切り捨てることとなるので、これを、従来の液晶NMR法と同様に考慮するため、Magic-Angleから少しずらせた角度(near-Magic-Angle、NMASと略)での試料回転を併用することとした。これにより、本来小さなDは測定できないが、大きなDは一定の比率だけ減少された値として観察できる。 こうして、液晶試料について、ROE,Jの他にDの情報が加わり、コンホメーションばかりでなく優勢配向も決定できることとなった。即ち、距離情報の他、配向情報(配向パラメーター、Sxx,Syy,Sxy,Syz,Sxz)が得られる。このためには、DについてもROEと同様にpseudo energyとして評価し、target functionの最小化による実験データ解析用のプログラムを作成した。こうして開発された汎用型液晶NMR法を、2、3のペプチドに適用し、それらの液晶中の構造と配向を決定できることを示した。こうして、簡単な生理活性を有するオリゴペプチドが、モデル膜と言う「超分子系」の中でどのような構造をとり配向しているかを実験的に求める方法を新たに開発した。
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