研究概要 |
1.質量分析法による糖質とタンパク質の構造解析:既に質量分析法により得られているコレラトキシンB-サブユニットとガングリオシドGM1aの水素結合性超分子は,非特異的な結合を有している可能性がある.そこて,質量分析法によると特異的結合機構解析を追究するため,糖結合活性が強いレクチンとその糖鎖を疎水性膜上で結合させ,非特異的結合を洗浄除去後,ESI法で測定した.その結果,会合体由来のピークのみが検出され,質量分析法による特異的結合性会合体検出の可能性が示された.また,タンパク質構造の溶媒依存性も質量分析法により確認できた.現在,MALDI法による解析も併せて検討中である. 2.高度に複雑な複合糖質の構造決定:他の方法では分析が難しい超微量ガングリオシドや生理活性を有する共有結合性糖ペプチドについて,質量分析法を用いて解析した結果,非常に有用な情報がえられた.前者ではウシ脳より得られたDhol-1ガングリオシドはシアル酸がα-結合している極めて珍しい構造であることが判明し,後者からは共有結合性糖ペプチトの結合ドメインの解析に成功した. 以上のように,タンパク質と糖鎖の構造解析及び特に生理機能が注目されている微量なガングリオシドや糖ペプチドの解析に,質量分析法は極めて有用な手法であることが分かった. 3.コンドロイチン硫酸及びへパリン,ヘパラン硫酸系糖質の解析:正及び負FABMS CID-MS/MS 法を用い,硫酸基の結合位置を決める手法を確立した. 4.シクロデキストリン包接錯体の構造研究:ホスト及び光学異性体ゲスト超分子の質量分析法による識別など来年度の継続課題とする.
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