研究概要 |
希土類元素は金属酵素や核酸酵素の活性増大,抗HIV活性など生体分子と特異的に相互作用する可能性が見いだされてる.また蛋白質結晶学の位相問題を解く新規プローブとして注目を浴びている.これらの機能を理解し新しい希土類化合物をデザインするためにはその構造的知見が不可欠である.本研究では希土類原子が生体分子とどのように相互作用するのか、立体構造と機能にどのような影響を及ぼすのか、を明らかにすることを目的とした. タチナタマメから単離されたコンカナヴァリンAを、テトラマ-状態(pH6.5)で結晶化を行った。得られた単結晶をGdCl_3溶液に浸積することによって、金属原子を置換した.高エネルギー物理学研究所の放射光を用いて、この結晶のX線回折データを測定した結果,新しい結晶形であることを発見した.また回折斑点に広がりが生じGa^<3+>イオンの結合による変化を示した.分子置換法で構造を決定し,原子パラメータの精密化を行った.各サブユニットの活性部位にはもともとCaとMnが存在するが,結晶学的に独立な2つのサブユニットの一方だけに,CaとMnの間にGdと思われる部位が見つかり,構造を大きく変化させていることが分かった.またタンパク質表面にもGdの結合サイトが見つかった.原子パラメータの精密化を現在進めている. 3-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素はロイシン合成に関与する蛋白質であり、活性発現にはMgイオンを必須とする。希土類原子の構造に及ぼす影響を調べるために、中等度好熱菌Bacillus coagulans由来の本酵素をアポ状態で結晶化を行った。条件のわずかな違いにより、3種類の結晶形が存在すること、そのうちの一つのX線解析に適していることを見いだした。高度好熱菌由来の酵素の構造を借りて分子置換法で構造決定することができた。
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