研究概要 |
最近、申請者は金属錯体に配位したチオラト等の含硫黄基の熱的なC-S結合開裂に基づく金属硫化物の生成を見いだし、酸素共存下の反応では酸化物が生成することも明らかにしている。本研究はこの結果に基づき、希土類元素の含硫黄錯体を前駆体として相当する酸化物、硫化物の合成反応を開発することを目的とした。 具体的には、EuCl_3, EU(acac)_3, SmCl_3, Sm(acac)_3の各種希土類化合物をZn(SMe)_2に20重量%を加え、メタノール中で充分混練りし、メタノールを留去した試料を900℃まで加熱することにより、希土類元素がドープされた硫化亜鉛の調製を行った。熱反応後、得られた生成物の解析は蛍光スペクトル測定により行った。EuCl_3およびEu(acac)_3を含むいずれの試料においても2価および3価のEuを含む発光スペクトルが観測され、熱反応の過程で3価のEuが一部2価に還元されていることがわかった。この機構としては金属間で配位子の移動を伴ういわゆる内圏型の電子移動と単純な電子移動の両者の可能性がある。また、一般に硫化亜鉛蛍光体を焼成させる際、アルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物等の融剤を添加すると粒子成長を促進させることが知られている。そこで、Zn(SMe)_2にEu(acac)_3および融剤であるKClを様々な重量比で試料を調製し、その蛍光スペクトル測定を行った。重量比Zn(SMe)_2: Eu(acac)_3: KCl=8:2:5の場合、励起波長395nmにおいて450-550nmの幅広い発光に加えて620nmと700nmの付近に3価のEuに由来する鋭く強い発光が観測された。さらに、Eu(acac)_3の重量比を増加させたZn(SMe)_2: Eu(acac)_3: KCl=7:3:5の場合においては、620nmと700nmの付近に3価のEuに由来する鋭く強い発光のみが観測された。
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