研究概要 |
層状ペロブスカイト型フッ化物Rb_2CdF_4,Cs_2CdF_4,Rb_2ZnF_4及び立方ペロブスカイト型塩化物RbCaCl_3,CsCaCl_3にGd^<3+>を添加した単結晶を作成し、X,K及びQバンドESR装置を用いて室温-600℃の温度領域の測定を行った。観測されたスペクトルから、独自に開発した厳密対角化プログラムを用いて微細構造パラメータを高精度決定した。層状ペロブスカイト化合物について新たに見出された直方対称Gd^<3+>中心の2階微細構造項を結晶のc軸及びa軸方向の一軸対称項に分離したところ、母体2価陽イオンへの単純置換中心では負であったc軸対称項が直方対称中心では正となっていることが分かった。また、a軸対称項は立方ペロブスカイト化合物中のO^<2->配位子を伴うGd^<3+>中心の値に近く、この直方対称中心がa軸方向にO^<2->を伴うものであることが明らかとなった。以上の解析から、O^<2->がa軸方向に1個配位したときはc軸上のF^-イオンが反発されて配位子八面体が伸びること、その結果としてZn^<2+>のように小さなイオン位置にも大きなGd^<3+>が置換できるようになることが分かった。RbCaCl_3,CsCaCl_3の立方相においてGd^<3+>が単純置換した立方対称中心では、4階微細構造項|b_4|はRbCaCl_3よりCsCaCl_3の方が大きく得られた。これより、|b_4|はRbCaCl_3→CsCaCl_3→CsSrCl_3→CsPbCl_3と母体の格子定数とともに一度増大しCsCaCl_3を極大として減少に変わることが明らかとなった。また、CsCaCl_3中のCs^+空孔を伴うGd^<3+>中心において、450℃付近では格子振動が激しくなることによってCs^+空孔はGd^<3+>から離れていき、再び室温まで冷却すると一定部分のGd^<3+>がCs^+空孔と再結合することが分かった。スピンハミルトニアンと錯体構造の関係を解明するため、今後さらに多くの希土類イオンの形成する複合中心を研究していく。
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