研究概要 |
化学結合性の異なる、酸化物、フッ化物、硫酸塩ガラス中に希土類イオンをドープし、ガラスを作製した。ガラス中のEr^<3+>イオンの配位子場Ω_t(t=2,4,6)パラメータを各遷移の還元行列要素、吸収断面積、密度、屈折率から、Judd-Ofelt理論により求めた。系統的に研究した全てのガラス系において、Er^<3+>,Nd^<3+>のΩ_6パラメータの値は5d電子密度との間に強い相関があることを明らかにした。さらに、d-pπ結合性の観点から高いΩ_6の値が期待できる硫酸塩ガラスの作製を試み、Er^<3+>イオンの光学特性の評価を行った。溶融法で作製した48ZnSO_4・50M_2SO_4・Er_2(SO_4)_3ガラス中のErのΩ_t(t=2,4,6)を、Judd‐Ofelt理論により求めた。また、Eu^<3+>イオンをドープした同組成ガラスに対してフォノンサイドバンドを測定した。通信光増幅遷移に対応する、^4I_<13/2>‐^4I_<15/2>遷移による1.53μm蛍光の減衰曲線をQスイッチパルスNb:YAGレーザの第三高調波励起によるパルス色素レーザー、赤外域分光器とGe光電子倍増管検出器、100MHzオッシロスコープを用いて測定した。 Er^<3+>イオンのΩ_6はこれまでに研究を行ってきたガラス組成中、最大の値を示し、^<151>Euメスバウアー効果の異性体シフトは酸化物中で、最も低い値を示した。これはS‐O,S=9結合の強い共有性により、酸素上の負電荷密度が小さくなったことによるものだと考えられる。希土類に配置したフォノン相互作用は小さい。一方1.5μm遷移確率は高いΩ_6パラメータを反映して、大きな値を示した。蛍光寿命τ_fと、自然放出係数Aから算出した量子効率ηは、ケイ酸塩ガラス中のEr^<3+>に比べ高い値を示し、非輻射損失W_<NR>は小さくなることを明らかにした。
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