研究概要 |
本研究課題で使用するp-ニトロ基を有するアゾ色素化シクロデキストリンの合成は成功し,基本的物性と伴に既に発表した.本研究の初期段階で希土類金属アゾフェノラート塩の可視吸収帯が著しく短波長シフトすることを発見した.この観測は,最近理論計算で話題となっているCe-O結合の強い共有結合性に対する証拠であると推定されたので,希土類金属イオン-アゾフェノラート酸素原子間結合の共有結合性を評価するために,3種類(o-ニトロ,p-ニトロおよび2,4-ジニトロフェニル)のアゾフェノール誘導体と8種類(Li,Na,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Eu)の金属塩化物との相互作用を3種の溶媒(H_2O,MeOH,EtOH)中で可視吸収スペクトル法で系統的に検討した.その結果,アゾフェノールの種類つまり酸性度および溶媒の種類や極性とは無関係に,希土類金属イオンがアルカリ土類金属およびリチウム塩よりもアゾフェノラート酸素原子と圧倒的に強く相互作用し,最長波長吸収帯が125-34nmも著しくブルーシフトすることを観測した.このブルーシフトは希土類金属イオン-アゾフェノラート間にかなり強い共有結合性を仮定することによって初めて説明することができた.また,アゾ色素化シクロデキストリン-希土類錯体の吸収スペクトルの成分解析実験において2,4-ジニトロフェニルアゾフェノラートに基づく最長波長吸収帯が2つの異なる遷移による吸収帯の重ね合わせであるという予期せぬ結果に直面したので,CAChe-ZINDO法によって検討した結果,2,4-ジニトロフェニルアゾフェノラートの最長波長吸収帯だけが2つのバンドの重ね合わせであることが明らかになった.今後,本研究によって明らかにした基礎的事実に立脚して,さらに分光法による分子認識呈色機能の評価を推進する予定である.
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