研究概要 |
1.Y、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ybの塩化物を25mg/kg iv投与し、安楽死させたマウスの肝臓の一部をホモジナイズ、遠心分離し、投与元素の分布を調べた。試料は湿式灰化後し、各元素濃度をマイクロ波プラズマ-質量分析法、または原子吸光法で測定した。 2.肝全体の投与元素濃度は、100μg/g湿重量前後で、元素による違いはあまり大きくない。各画分の割合は、700×g沈殿(700ppt)に肝全体の54〜80%と最も多く、次いで9,000×g沈殿(Mt画分)に15〜36%、105,000×g沈殿(Ms画分)に2〜16%、105,000×g上清(可溶性画分)には0.3〜1.7%であった。分布のパターンは投与元素により異り、全体の傾向としては、700pptおよびMt画分に存在する割合が軽希土で80〜90%であるのに対し、重希土は93〜98%とさらに高い値であった。それに対応してMs画分は軽希土の方が重希土より分布割合が多かった。可溶性画分では、Ybが最も多く次いでLaであった。 3.各画分における蛋白量当たりの投与元素濃度は、700ppt>Mt画分>Ms画分であるが、濃度オーダーは同じで、特にLa、Ce、NdはMt画分中濃度の方が700pptより高かった。 4.肝臓中Ca濃度は、希土類元素を投与しない対照群に比べて1.5〜5倍に増加した。重希土の方が増加割合が多い傾向があるが、YbだけはLa〜Ndと同程度であった。各画分中のCaはいずれの画分でも対照群に比べて増加すること、特にMt画分における増加割合が高いこと、投与元素による増加パターンは700pptとMt画分では、肝全体の傾向と一致するが、Msおよび可溶性画分では傾向が明らかでなくなることがわかった。Yb投与ではMs画分および可溶性画分のCa濃度は対照群と同じかむしろ低く、他の希土類元素とは生体作用に違いがある可能性が示された。 5.投与元素の結合化学種の検討に当たり、ゲルろ過カラムによる分離を行った。50mM Tris-acetate buffer(pH7.0)を溶出液とし、Tb投与群の可溶性画分をSephadex G-100カラムにかけたところ、Tbは比較的高分子量(数万のオーダー)のフラクションに検出された。対照群の可溶性画分に比べて増加したCaは低分子のフラクションに検出されTbとCaが異なる分子種に結合していることがわかった。
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