研究概要 |
1.低原子価サマリウム錯体を用いるシクロブタノンのホモロゲーション反応 SmI_2を用いるヨウ化メチレンとシクロブタノンとの反応を行ったところ,室温で30分の反応条件下でヨウドヒドリンとシクロペンタノンの混合物が得られたが,15時間反応を行うとヨウドヒドリンはほとんどシクロペンタノンへと異性化した。各種3-置換シクロブタノンとの反応より良好な収率で対応するシクロペンタノンが生成した。1,1-ジハロアルカンを用いても同様に反応は進行し2,4-置換シクロペンタノンが好収率で得られた。2,3-置換シクロブタノンの場合はシクロペンタノンへ転位する際の位置選択性が問題になる。2,3-二置換シクロブタノンとの反応では置換基の結合していない炭素側から選択的に転位が起こり対応する2,3-置換シクロペンタノンが選択的に生成した。環状の2,3-置換シクロブタノンとしてビシクロ[3.2.0]-2-ヘプタノンとの反応を行ったところ,ほぼ1:1の異性体比で2,3-置換体と3,4-置換体が生成したがビシクロ[4.2.0]-2-オクタノンからは3,4-置換体が優先して生成した。 2.低原子価サマリウム錯体/有機金属試薬複合系によるシクロアルカノールの合成 -78℃でSmI_2のTHF-HMPA溶液にまず3-ハロエステルを加え,引き続きGrignard試薬をゆっくり加える。その後,室温まで反応温度を上昇させて1h反応を行うと置換シクロプロパノールが好収率で生成した。二価のサマリウム錯体としてサマロセンを用いても同様にシクロプロパノールは合成できるが興味深いことにHMPAの添加をすることなく反応が進行した。この反応を4-,5-,および6-ハロエステルへと拡張し,種々の環状化合物の合成反応に関し検討を行った。5-および6-ハロエステルからはそれぞれ置換シクロペンタノールおよび置換シクロヘキサノールがそこそこの収率で生成したが,水素化ジイソブチルアルミニウムをGrignard試薬の代わりに用いれば無置換のシクロペンタノールやシクロヘキサノールが合成できた。
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