研究概要 |
希土類イオンを不純物として含むイオン結晶は,YAG:Nd^<3+>レーザーに代表されるように良質のレーザー用結晶として用いられている.希土類イオンを含む媒質を現在知られている波長より数多くの発振波長をもちしかも効率の高いレーザーとして役立たせるため,励起波長よりも短い波長の発光を示す反ストークス発光を利用したアップコンバージョン発光過程をLiNbO_3:Er^<3+>やLaF_3:Nd^<3+>結晶などについて調べた. LaF_3:Nd^<3+>においては,二光子吸収過程による380nm光レーザー発振が確認されているが,(1)それ以外の波長の発光は生じないのか,(2)三光子過程によるアップコンバージョン発光が可能であるか,(3)両者の緩和発光過程にどのような違いがあるか,(4)アップコンバージョン発光効率を高くする条件は何か,などを明らかにするため時間分解分光測定実験や多光子非線形光学実験を行った. LaF_3:Nd^<3+>結晶については,792nm光または733nm光を用いての励起準位への共鳴励起により,二光子吸収過程および三光子吸収過程を通しての強いアップコンバージョン発光を同時に観測した.530nm,580nm可視光線発光が二光子吸収過程により,また330nm,380nm紫外線発光が三光子吸収過程により生じていることが確認された.これらの発光線には,緩和励起過程の違いにより,三光子吸収過程を経ての発光が二光子吸収過程を経ての発光より20ナノ秒遅れていることが明らかになった.さらに,アップコンバージョン発光は,非共鳴励起によるよりも共鳴励起における方がその強度が増加することが明らかになった.
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