研究概要 |
本研究では、遺伝情報解析に適した希土類錯体を用いたDNAラベル化剤の開発、ヒトをはじめとした様々な生物種の遺伝子のPCRによる増幅条件の検討、キャピラリー電気泳動用蛍光検出システムの開発・設計を行った。 1.希土類金属を用いて様々な錯体を合成し、その蛍光スペクトルおよび蛍光強度を測定した。その際には、希土類元素としてランタニドのEu(III), Tb(III), Sm(III), Dy(III)を選び、数種のキレート剤を選択し、これらの錯体の蛍光スペクトルを測定した。その結果から、これらのものは、全てDNAの遺伝情報解析に適した蛍光特性を有する希土類錯体であることを明らかにした。 2.ヒト・酵母・線虫のゲノムから取り出した遺伝子の塩基配列をキャピラリー電気泳動により決定するために、シークエンシング反応の最適化を行った。その結果、ヒトをはじめとした様々な生物種の遺伝子配列をキャピラリー電気泳動を用いて最も正確に決定できる条件を確立した。 3.この結果および希土類錯体の蛍光スペクトルのデータから、希土類錯体を蛍光ラベル化剤として遺伝子配列を決定する際に必要なキセノンランプを用いた蛍光検出装置の設計・開発を行った。この装置は、希土類錯体の蛍光特性に合致した励起波長を選択可能で、4種の蛍光ラベル化剤から発する波長の異なる蛍光を同時に検出できるものである。 これらは、希土類錯体による高感度ラベル化法とキャピラリー電気泳動を結合した高性能遺伝情報解析システムを開発するための基礎的でかつ重要な成果である。今後は、希土類錯体の蛍光特性に合致したレーザー蛍光検出システムとキャピラリー電気泳動を結合したシステムを開発し、希土類錯体で蛍光ラベル化したDNAの遺伝情報解析のための最適条件の検討を行う。
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