研究概要 |
配位子 haeh (N,N',N'',N''',N'''',N'''''-hexakis (2-aminoethyl)-1,4,7,10,13,16-hexaazacyclooctadecane)と希土類(III)イオンとの錯形成の研究を行った。haehと18員環ヘキサアミンは軽希土イオンから重希土イオンになるにつれて安定な錯体種を生成している。重希土イオンになると表面電荷密度が増大するので、このことから静電的な相互作用が錯体の安定度を支配しているように思われる。また、これら2つのポリアミンの安定度定数は軽希土イオンではほとんど変化がないことから、希土類(III)イオンはペンダントのアミノエチル基の窒素原子よりも環部分の窒素原子と強く相互作用していると推測される。しかし、重希土イオンでは18員環ヘキサアミンの場合よりhaehの安定度定数が大きく、ペンダント効果が見られると言える。 次に、最も環サイズの小さい9員環トリアミンに配位性酸素ドナー原子を有するペンダント基を導入した新規配位子thpp (1,4,7-tris (2-o-hydroxyphenyl) propyl)-1,4,7-triazacyclononane)とネオジムおよびテルビウム(III)錯体を合成し、これらの錯体のX線吸収スペクトルを測定した。XANESスペクトルからthpp錯体の金属イオン周りの配位構造は、昨年解析したアミノポリカルボン酸DTPA(diethylenetriaminepentaacetic acid)の希土類錯体と同様の構造を有していると推定できる。また、EXAFSの結果からネオジム(III)錯体の配位原子数はDTPAのネオジム(III)錯体と同数の9であり、一方、テルビウム(III)錯体の配位原子数は8となった。
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