研究概要 |
1.オレフィン類の固相光二量化反応の方向性をアンカー分子(又は原子)との結晶性コンプレックス生成により他の方向へ変化させる方法を見だすこと、及び、同じ方法により、反応性の無いオレフィンを反応性にするための研究を行った。即ち、桂皮酸はジアミンとの複塩結晶中で光二量化するとα-トルキシル酸を与えずにβ-トルキシン酸を主として生成するが、このときに、′n=3ルール′(α,ω-ジアミンのポリメチレン鎖の長さがn=3の時に桂皮酸の二量化収率は最大になる)や′ゴ-シュルール′(1,2-ジアミンがゴ-シュ型立体配座を取ると反応性結晶構造になる)の存在することが見だされた。これらの結果により、トリメチレンジアミンやトランス‐及びシス-のシクロヘキサン-1,2-ジアミンが桂皮酸の二重結合を近ずけるためのアンカー分子としての役割を果たしていることが明らかにされた。基質分子間のπ一π相互作用やC1…C1,C-H…C1相互作用によりアンカーのコンホメーションが制御されることも示された。 アンカーと光反応性分子との結晶性コンプレックス形成相互作用としては、分子間相互作用の中でも特に重要なイオン結合、水素結合、メタル-リガンド相互作用を利用している。そのために、アンカーとして、ジアミン、ジカルボン酸、メタルを用い、更に他の基質の反応へ展開させる予定である。 2.2,4,6-トリイソプロピルベンゾフェノン-4′-カルボン酸メチルエステルの固相光環化反応性が異常に低い原因を探るために、単結晶X線構造解析や核酸反射スペクトルの測定、温度効果の実験を行った。その結果、異常な低反応性は結晶のパッキングが密なことに起因していることが解った。
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