研究概要 |
7-オキサノルボルナジエン体とシクロオクタテトラエンの高圧環状付加反応から得られたトリシクロ[4.2.0.0^<2,5>]オクタン体(1)の中央の四員環がX線結晶構造解析中に単結晶状態を保持したまま開裂し,1,5-シクロオクタジエン体(2)になる結晶相反応を見い出した。この時,2は再結晶溶媒に用いたシクロヘキサンを包接していた。この開裂は1を結晶状態で加熱しても起こることから,熱的な反応とも考えられたので,低温でX線構造解析を行った。先ず,クロロホルムとエーテルの混合溶媒から溶媒を包接しない単結晶を得,室温で構造解析したが,やはり,中央の四員環は開裂した。この場合,分子容を減少するために,半円状の2がほぼ半分子長だけずれて向かい合い,空孔は形成していなかった。セル常数や体積もシクロヘキサン包接体の値よりも小さかった。 この溶媒を包接しない単結晶を-90℃で解析しても環開裂したので,-140℃でX線構造解析すると,中央の四員環は開裂せず保持された。中央の四員環部の結合長は分子短軸方向が薬1.6Åと長い値を示した。この環開裂の様子を調べるために,室温下でX線を照射し,その後,-140℃に戻して構造解析した。その結果,徐々に中央四員環が開裂していくのが追跡できた。反応の進行に伴い,中央の四員環の炭素の位置は変化するが,その他の原子の位置はほとんど変化しない。次に、シクロヘキサンを包接している単結晶を-140℃でX線構造解析した。中央四員環は保持された。この場合も室温でX線照射し,-140℃でX線構造解析を繰り返すと,中央の四員環の開裂の様子が追跡でき,包接体の方が幾分速いことが分かった。現在,X線照射下の中央四員環開裂が熱的に起きているかについて,反応速度を求めることによって検討している。
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