結晶環境を利用すると溶液中とは異なる立体選択的な反応が進行する。この原因として、(1)反応前の分子の配座が固定されること、ならびに、(2)反応中の分子の構造変化が隣接分子によって立体的に規制されることがあげられる。本研究では、特に(2)の要因に着目して、有機化合物の光反応性と結晶構造との関連を検討した。トリイソプロピルベンゾフェノン誘導体の光環化反応は多くの場合固相中2時間程度で反応が100%進行するが、P-COOMeおよびP-COCl誘導体は反応不活性である。X線結晶構造解析の結果、トリイソプロピルフェニル基の面内回転が結晶中で抑制されている場合、分子内環化反応が進行しない事が明らかとなった。また、エナミドの光環化反応についても、OMeやCOOMe基などをフェニル基に導入すると、固相中での環の回転が抑制され、反応性が低下する事が明らかとなった。この他、カルバゾールとジニトロ安息香酸との分子間光反応性も検討した。
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