研究概要 |
1.コール酸包接化合物結晶の溶解エンタルピー:コール酸をホスト分子とし,メタノールおよびアセトフェノンをそれぞれゲスト分子とする包接化合物結晶を合成し,精密熱量測定を実施し,包接化合物の生成エンタルピー,包接化合物結晶からゲスト分子を引き抜いた後のホスト格子状のコール酸結晶のエネルギー状態などを決定した。 2.固相反応の反応機構:アセトフェノン,エタノール,メタノールをそれぞれゲスト分子とするコール酸包接化合物結晶を合成し,TG-DTA-MSおよびDSCを用いてゲスト分子が包接化合物結晶より脱離(分解)する際のメカニズムを明らかにした.昇温により生じる最初(第一段階)の分解は拡散律速であることが明らかになた.さらに上記のゲスト分子の脱離反応における活性化エネルギーを決定し,メタノール94.1kJmol^<-1>,エタノール137.5kJmol^<-1>,アセトフェノン99.1kJmol^<-1>などの値を得た. 3.粉体の接触による反応によって生じる熱量の検出:戸田芙三夫教授らによって見出された粉体を接触することによって進行する固相反応の試料について,前年度に続き測定法を改良して実施し,この反応では約3μWの微少熱が長期に亘って発生し続ける発熱反応であることを測定するのに成功した. 4.その他:キラルな粉体を混合することにより,ラセミ体が生成する固相反応の反応熱を正確に測定する研究を続行している.この反応では,測定によるバラツキが異常に大きいことを見出し,検討中である.
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