研究概要 |
本年度はU-T-Sn系(T=Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Pt,Pd)化合物の探索を行い1-5-1の組成が単相であることを見いだし、現在その結晶系の解析を行っている段階である。 一方、ウラン化合物の母結晶材純良化法についても検討を行った。工業的にはDOR法と溶融塩電解精製法の組み合わせによってU,Np,Puの4N程度金属が高い収率で製造されているが、この方法を数十グラム以下の実験室規模で行うとその収率は極度に低下する。本研究では、ウランの実験室規模での高純度金属の調製法を確立することを目的とした。原研の小林義威氏らはフランアマルガムの熱分解によってウラン金属を製造しているが、その不純物は我々が管理している99.95%前後の3種類のウラン金属より相当少ないことから、この方法は実験室規模でUやNpの高純度金属製造の可能性が高いと推察できる。しかし、このウランアマルガムの調製法はウランの水溶液をナトリウムアマルガムで還元する方法であり、これが水素発生を伴う激しい反応であること、反応収率、大幅な水素イオン濃度の変化による沈殿の生成など問題点も少なくない。このためより安全で収率の高いウランアマルガムの調製法の検討が必要である。本研究ではウラン水溶液の水銀陰極電解法とその熱分解による高純度金属の製造を検討した。ウランの電解は15mlの水銀を陰極(表面積32cm^2)、白金を陽極としたセルで行った。UO_2^<2+>のU^<4+>への還元ではH^+イオンが反応に関与するため、UO_2^<2+>を0.5M塩酸溶液50mlとして低電位でU^<4+>に還元した後に、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝溶液で目的のpHに調整し溶液の総量を100mlとした。このU^<4+>溶液を-2.0Vvs.SCE以下の電位で還元して99.5%程度の高い電解収率でアマルガムを得た。ウランアマルガムの熱分解は1×10^<-6>torr以下の真空中で、最初に350℃の水銀を除去した後1250℃で1時間行った。熱分解生成物は銀白色の金属光沢を有していた。その密度は18.9_4g/cm^3であり、α相のX線密度19.04g/cm^3と極めて近い。生成物の熱分析結果によれば、ウラン金属のα相→β相、β相→γ相、融点に対応する吸熱ピークが観測された。熱分解生成物が時として表面に凹凸をもつ灰黒色の場合もあるが、アーク炉で容易に溶融できボタン状になることから、酸化物ではなくスポンジ状金属と考えている。
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