磁気秩序をもつf電子化合物のバンド構造は相対論的効果、特にスピン・軌道相互作用とスピン分極効果の競合からできていると考えることができる。その化合物が金属的性質を持つときフェルミ面をもち、ド・ハ-スファン・アルフェン効果の測定からその形状などを調べることができる。磁性ウラン化合物の5f電子は、エネルギー的にフェルミ準位より深い位置に存在して局在していると考えられている4f電子とは異なり、広い波動関数の分布をもっている。そのため、かなり遍歴的な性格をもち、主に5fから作られるバンドよりフェルミ面が作られることが予想される。 バンド理論から磁性ウラン化合物のフェルミ面を自己無撞着に構築し、実験との系統的解釈を行うためにDiracの相対論的方程式に基づいた相対論的LAPW法をスピン分極した理論に拡張した。この方法は、交換・相関ポテンシャルとしてスピン分極した相対論的密度汎関数法に基礎を置いている。この研究では、相対論的LAPW法におけるAPW球内の基底関数を常磁性状態の相対論的波動関数で展開して、スピン分極効果を変分関数で考慮した。この理論によるバンドプログラムを開発し、磁性ウラン化合物のバンド構造が計算できるようにした。この方法による結果の詳細な考察から、スピン・軌道相互作用により分裂した2つの5f軌道間でスピン分極効果を通じて結合して、新しい軌道を作ることが分かった。今回の方法はその効果を変分的に求めたが、さらに積極的に基底関数の中にこの軌道の効果を繰り込むことが必要であることが明らかになった。
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