研究概要 |
Poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPA)ゲルは温度誘起体積相転移を起こすことでよく知られている.この転移現象はPNIPAゲルのアミド基と水の水素結合に起因すると考えられている.更に,PNIPAゲルは体積相転移と同時に白濁(多分,相分離現象)することもよく知られている.したがって,本研究では,PNIPAゲルの相分離現象を伴った体積相転移のメカニズムを解明することを目的とし,先ず,体積相転移における水の役割の概観をイメージするために,各種金属イオン水溶液中でのPNIPAゲルの体積相転移温度を測定し,水和との関係を議論する. N-isopropylacrylamide,N,N'-methylene bis(acrylamide),ammonium persulphate,N,N,N',N'-tetramethylethy1ene diamineを含んだ水溶液中でPNIPAゲルを合成し,数日間,ゲルを水中で洗い,試料とした.金属イオンは,一価イオンとして,Li^+,Na^+,K^+,Rb^+,Cs^+,Ag^+,二価イオンとして,Mg^<2+>,Ni^<2+>,Co^<2+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>,Mn^<2+>,Cd^<2+>,Ca^<2+>,Sr^<2+>,Pb^<2+>,Ba^<2+>,三価のイオンとして,Al^<3+>,Fe^<3+>,Cr^<3+>の硝酸塩,合計20種類の硝酸塩を用いて,0〜1Mの濃度範囲の十種類の金属イオン水溶液を調整し,0.1℃の温度精度で試料ゲルの体積相転移温度を測定した 測定したいずれの金属イオンでも,金属イオンの添加によって,PNIPAゲルの体積相転移温度は低くなった.金属イオンを1M添加すると,PNIPAゲルの体積相転移温度が数℃程度降下する.又,その依存性の曲線はイオン種によって特徴があるように見える. どの金属イオン添加においても,イジングモデルから誘導した次式でフィテイングすることができた.
|