研究概要 |
流体の相転移・相分離と流動が結びついた現象が大きくみて次の2つのカテゴリーに分類することができる.第一のカテゴリーは,相分離している流体系に流動が加えられる場合であり,流体のドメイン構造が流動により大きな変形を受け,ドメイン構造の変化が流体のレオロジーにも影響する.一方,第二のカテゴリーでは流動によるストレスが流体の内部構造に作用し,均一であった流体が流動下で相分離の傾向を示す.今年度については「せん断流下での2成分流体の挙動」を分子動力学シミュレーションによって調べたが,これは第一のカテゴリーに属する.現在のところ2次元のLennard-Jones流体を取り扱っている.ミクロなモデルを用いる最大の利点は,流体力学的な効果も自然に取りこまれることにある. まずせん断流下で相分離する流体のドメインの構造について調べた.その結果,せん断流下の定常状態ではドメインは流れの方向に大きく引き延ばされ,ストリングのように細長くつながることがわかった.このようなドメインのストリング構造は,高分子混合物では観察されているが,低分子混合物に対しては今回のシミュレーションではじめて確認された.また,シア-下で相分離する流体系の散乱パターンは,1)楕円形に引き延ばされ,2)主軸方向に暗い筋が,3)非対象に入っているが,これらの特徴は,3)波数依存の1)アフィン変形に2)ロ-パスフィルターを加えることでほぼ再現できることがわかった.次にシア速度を変えたときの流体の定常状態での粘性率の変化を調べた.シアが非常に大きいので流体は非ニュートン的な挙動を示すが,粘性率をバルクと界面の成分に分けて考えるとバルクより界面の非ニュートンが大きいことがわかった. 今後は前述第二のカテゴリーに属する現象を取り扱う予定である.
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