研究概要 |
本研究では、二本足梯子格子と呼ばれるCu_2O_3面と一次元的なCuO_2鎖をもつ梯子型銅酸化物Sr_<14>Cu_<24>O_<41>について、種々の元素置換によってキャリヤ-濃度を変化させた試料を作製し、その電気的、磁気的性質を調べることによって、この系における超伝導の有無と金属-絶縁体転移の様相を明らかにすることを目的とした。 Sr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>は,x=0では絶縁体であるが、Caの置換により金属-絶縁体転移が起こり、x≧8.4で金属的になることが分かった。しかし、超伝導は出現しなかった。bond-valence-sumsの計算から、Ca置換による金属化は、キャリヤ-であるホールが電気伝導性の悪いCuO_2鎖から電気伝導性のよいCu_2O_3面に移動したことに因っていることが分かった。また、Cu_2O_3面のホール濃度は高温超伝導体におけるCuO_2面のホール濃度に比べてまだ低く、超伝導の出現のためにはCu_2O_3面へのさらなるホールの供給が必要であると推測された。 Sr_<14-x>A_xCu_<24>O_<41>(A=Ca,Ba,Y,La)のx=0の試料で80K付近に観測されていた帯磁率のブロードなピークについては、その起源がよく分かっていなかったが、xの増加とともに削減することが分かった。そして、このピークは、CuO_2鎖のCu^<2+>スピンがスピン一重鎖を組み、スピンギャップを形成することに因っていることが分かった。一方、Cu_2O_3面のCu^<2+>スピンは室温より高温でスピンギャップを形成していることが推測された。また、YやLaの置換によりCuO_2鎖のホールが著しく減少し、CuO_2鎖のCu^<2+>スピン間の反強磁性的相互作用が弱くなり、CuO_2鎖のスピンギャップが削減することが分かった。しかし、そのミクロなメカニズムについては、まだよく分かっていない。
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